CDA理事長のつれづれ

お箸の話し

 米食文化圏には、「箸」という道具がある。

 暮らしの中に、不可欠な一品だ。

 生活用品なら、洋の東西を問わず、デザイナーの関心を集めるのは当然で、日本にも数多くの先輩デザイナー達が箸について、研究・提案・論述していた。だが、今回はデザイン教科書に記述されている「無名性」の典型例である「箸」を、文化比較の視点から考えてみようと思う。

■機能と形態

 中国、韓国とは違い、日本人は箸だけで食事を進めることが多い。形状は違うが、中国や韓国、東南アジアなどでは、匙と箸を併用するのが一般だ。中国では、汁物は必ず匙を使い、口を直接に椀に付けることはまずない。更に朝鮮半島では、レンゲ状の中国匙と異なり、西洋フォークの形状に近い。韓国では、汁物のみならず飯も必ず匙を使って食べる。

  箸以外に、ベトナム、タイではスプーン・ナイフを併用し、モンゴル人はナイフを常に携帯していると聞いている。食事の行為に合わせて、別々の特化した道具を使うので。

 この食文化の差異から、米食文化圏で各地の箸は別々の形態へ進化してきた。

 つまり、「つまむ、はさむ、押さえる、すくう、裂く、のせる、はがす、支える、乞む(くるむ)、切る、運ぶ、混ぜる」のすべて動作を、一膳の箸で済ませるのは日本だけである。使い方の相異から、箸に対してデザインの要件も変わる。

 これから、近代デザイン思想の主流とも言える機能主義に従い、機能美の基準で箸を見てみようと思う。

●長さ

 日本では古くから、自分に合った箸のサイズは、親指と人差し指を直角に広げた長さ(一咫:ひとあた)の1.5倍を目安にするとよいと云われている。中国箸、韓国箸と比べてかなり短い。これはより多くの動作を俊敏に行うために、日本箸が必然的に短くなったわけだ。

 なお、日本に夫婦箸(はめおとばし)があって、男女の個人差に合わせてサイズが違う。成長と合わせて子ども専用のしつけ箸もある。中国や韓国では、箸とは家族みんな共有の物で、個人所有物の発想はない。子どもも大人と同様に、同じ長い箸を使用する。

●断面形状

  ご存じ、韓国箸の断面は扁平的で板状に近い。私たち外国人にとって使いにくいかもしれないが、韓国人が平気で操る姿を見ると羨ましくて仕方がない。実は、韓国人はご飯をスプーンで食べ、箸はおかずをつまむ時のみに使うのだ。おかずを裂いたり、切ったりする際、この扁平的な断面は操作しやすいと私は思った。

 一方、日本箸の典型は後ろの正方形断面から徐々に丸い断面の先端部へ変化していく。実は近代日本箸の形状が定着した江戸時代までに、有名な五角断面の箸が存在した。この五角断面の箸は、3本の指が奇数の五角に収まり、箸を持つ3本の指を正しく導きやすいと言われる。すごく機能的で美しくて、素晴らしい箸だと思う。

 ただし、職人が削り出し磨いて最後に漆をすり込んで仕上げられる製造工程は難しくて、あまり流通してなかったらしい。しかし、最近ではプラスチック製で大量生産が可能になり、よく居酒屋で見られる。

●先端部の形状

  断面形状は日本と同様の中国箸だが、日本箸のような鋭さはなく、丸いのだ。日本箸の鋭さは、魚を多く食べる日本の食卓で、骨まできれいに食べるためではないかと私は考える。

なお、近代になって、滑り止めのために先端部に溝を彫るのも日本箸特有な形状である。

●外国人の発想

 手元には、外国人デザイナーの友人から貰った箸がある。

  アメリカの親日家デザイナーは日本料理が大好きだが、箸は苦手でいまいちだ。彼がデザインした箸は、手持ち部分に糸を巻いていて、滑りにくい。また箸後部の断面を赤色に塗って、一目で正しい箸の持ち方かどうかを確認できるというのだ。

もう一つは、イタリアのデザイナーの作品だ。ポストモダンニーズム的な発想で面白いデザインである。しかし、アルミ製で重くて、後部の装飾は邪魔で、ぜんぜん使うモノではない。時代はバブルだったので、日本のメーカーは実際に商品化したが、今では幻の箸になった。

■材料

 箸の材料についても違いがある。 ご存じの通り、韓国の箸は殆ど金属製で、一般的にはステンレス製だが、上流階級では銀製の箸もある。日本では木製が多く、近代になってプラスチックも存在する。古来中国では木製と竹製は半々で、上流社会では象牙製箸もよくある。

  デザイン理論の材料計画には、性能で材料を決定する一方、風土に合わせて材料を使用する話もある。だから、中国の南方は殆ど竹製の箸で、景徳鎮では磁器の箸は普通に使われている。

■作法

 デザインはモノとコトを一緒に考えなければならない。

 ここにも日本箸文化の特徴がある。

 中国や韓国では箸の置き方が縦であるのに対して、日本では横である。中国の丸い食卓との因果関係の説もあるが、もう一つの原因は「いただきます」と「ごちそうさま」だと私は思う。

  最後の写真には私が指導した学生の作品だが、箸の中心部に磁石を埋めている。そのため、使用する際に必ず箸を横にして分けなきゃいけない。ここで、「いただきます」を思わせる「間」を設ける提案である。

 人間は手で温もりを感じる。親指と人差し指に箸を入れ、合掌して、感謝の気持ちを込めて、「いただきます」をしてから、箸を分けて使い始めるという。

  学生ならではのデザインだが、この作品で本文を終了させていただく。

(著 中部デザイン協会理事 黄ロビン)

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