中部デザイン協会 デザインの仕事場におじゃまします

第21回 岩月脳活性化デザイン研究所 主宰 岩月和人氏

親や親戚など身近に高齢者のいる高齢化社会を迎え、そんな中で聞こえてくるのは「できればボケずに逝きたい」とする声である。この高齢者の切なる願いに応えるデザイン開発に早くから取り組んでこられた、岩月和人氏が主宰する岩月脳活性化デザイン研究所に今回はおじゃまして、ボケ予防することを主眼とした「脳活性化ゲームのデザイン開発」についてお話しを伺いました。

インタビュアー:岩月脳活性化デザイン研究所を設立されたのは何時ですか。

岩月さん:短大を退職した2002年4月です。学生と一緒に足かけ8年間やってきた脳活性化ゲームの開発や、その普及を継続するとともに、ボケ予防のための脳刺激・活性化の方法を調査・研究し、これを横展開できないかと考えて始めたものです。

インタビュアー:脳活性化ゲームやボケ予防の研究開発に着手したいきさつは。

岩月さん:身内をボケで亡くし、ボケたら大変と言う意識を以前から持っていましたが、浜松の短大で講師を始めてまもなく、浜松医療センターの金子副院長(当時)の「ボケは防げる、治せる」という新聞記事を見て、同じ浜松の地で、教鞭を執るデザイナーとして、何かできないかと考えたことがきっかけです。
私は、デザイナーは商品性と社会性の両立を考えることが必要で、社会性は学生時代に考える癖をつけることが重要だと思っておりますが、脳活性化デザインのテーマは、社会性を考える福祉の中でも未だ取り上げられておらず、また短大学生のレベルにも合った課題だと考え、学生と一緒に取組み始めました。

開発に当たっては、初期は金子先生と、後は、その下にいた高槻臨床心理士(現エイジングライフ研究所)の指導を得て、30点余のゲームをデザインしました。現在、そのうちの7点を商品化しております。

インタビュアー:脳活性化ゲームとは。

岩月さん:金子先生の「脳は高齢化すると、前頭葉が先に衰えてきて、その後に左・右脳が劣化する」と言う説に基づき、前頭葉を刺激し、その機能を歳相応に維持しつづければ、ボケずに逝けるのではないかと考え(左右脳が劣化すればボケから回復できない)、高齢者教室などで、大勢でワイワイと遊びながら、前頭葉を刺激・活性化することを主眼にして開発したゲームです。一部は園児の知育などにも使っています。

インタビュアー:具体的にどんなゲームがありますか? また、そのねらいは。

岩月さん:高齢になると起きてくるいろいろな問題点に対応して、それを未然に防いで行こうと考えています。ねらいごとに代表的なゲームを紹介しますと

  1. 意欲・積極性の低下に対し、はじめにやるゲームとして唱歌カルタがあります。これは、カルタの絵や、メロディに感動することで右脳を刺激し、意欲、ゲームをやる気を起こさせます。
    唱歌カルタ

  2. 行動・判断ペースの低下に対し、じゃんけんペタンコがあります。これは輪投げのように直感的にやれるものでなく理屈で判断してやる必要があります。言葉神経衰弱や、十二支ビンゴは、テキパキと判断し、みんなのペースに遅れないようにやっていかねばなりません。
    じゃんけんペタンコ

  3. 注意分配力の低下に対しては、それぞれのゲームが、なんらか効くように考えていますが、しりとりブロックくずしが最もこの強化を意図しており、幾つかのことに気配りして進める必要があります。
    しりとりブロックくずし

  4. ボール投げ3並べは、じゃんけんペタンコ同様、チームプレイと共に、協調性を強化するゲームです。
    ボール投げ3並べ

これらのゲームの詳細は「岩月脳活性化デザイン研究所」をご覧ください。
ゲームは、(a)大勢で一緒に遊べるものと言うことの他、(b)偶然に上手くいくという要素を少なくし、がんばっただけ報いられ、向上心が湧くもの、(c)子供の遊びのようなものでなくプライドを持ってやれるものといったことも考えてデザインしております。

インタビュアー:脳活性化ゲームの普及状況は。今、どのような場で使われていますか。

岩月さん:保健師対象の痴呆予防研修会の場で展示・PRを行いまして、これにより、現在、北海道から九州まで150ヵ所余の自治体のボケ予防教室で使用している他、前述のホームページで紹介したり、福祉通販カタログなどにも載せられていて、その方面からも別途に広がりつつあります。
私自身も40箇所余のボケ予防教室の現場に出かけ試行しています。今年も九州・四国や東北を「巡業」と称して回る予定です。
cdaの会員の皆様には、福祉機器展や、デザイン展などいろいろなところでの展示するチャンスを作っていただき、特に普及初期段階での応援は心強く、そのお陰で、ここまで来られたと本当に感謝しております。

インタビュアー:今後はどのような展開を。

岩月さん:現状のゲームの普及・改良と共に、新しいゲームの開発をしたいと思い、方々の学生にも取組んでもらっていますが、cda会員の皆様も是非アイデアを出していただければと思います。(自分のこととしてとらえうるという適齢期に達しておられる方も多いと思いますので)
最近はゲームを試行して回る処で、高齢者に対しボケ予防の話をしたり(ボケ予備軍の一人として実感的に)、保険師との意見交換などをしてきていますが、研究所としては、前述のようにボケ予防の方法論にまで話を進め、これをまとめ横展開できないかと、難しいことも考えています。
私も老人クラブの一員ですが、老人クラブに出てこなくなり(活動の足を引っ張ると言うことで)、ボケるのを待っている人を多く見るにつけ、何とかすべきで、元気でない人の集まりとしての第2老人クラブを作る必要性を考えています。
今は一人でやっていますので、あれもこれもやることは、とても無理ですが、一緒にやっていただける方がおられれば宜しくお願いしたいと思います。


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