中部デザイン協会 デザインの仕事場におじゃまします

第13回 愛知産業大学教授 高橋省次氏

名古屋市から車で一時間半たくさんの自然や山々に囲まれて建つ大きな建物が今回おじゃまさせていただく愛知産業大学、ここで教授を務めると共に我ら中部デザイン協会の理事長でもある高橋省次さんです。
到着するとまず目にするのは広大な景色です。この日は秋晴れで心地良い風が流れて私達一同こんな素晴らしい環境でデザインの勉強ができる生徒達を羨む限りでした。

 まず最初にこちらの学校の造形学部の校舎を案内をしていただきました。
夏休み中の校内には生徒はポツポツ、その生徒達に話し掛ける高橋先生、そして広い校舎内や展示作品をご丁寧に説明、案内して下さり暖かいハートのある方だと感じました。
見学を終えた後、向かったのが高橋先生の研究室に伺い、いろいろお話を聴きました。

デザインとの出会い、そして経歴

昭和8年愛知県下産業の町、刈谷市に生まれた。地元刈谷高校では進路に迷った末、東京芸大の金属工芸科へ進んだ。当時はまだ「デザイン」という言葉さえなく、明日の作家を目指してデッサンや意匠に明け暮れていたように思う。時たまたま、タバコ「peace」のデザインが話題(外人に依頼当時150万円という破格のデザイン料)となっていた。次いでその話題の人レイモンド・ローウイの新書「口紅から機関車まで」が紹介され、また欧米の目新しい家庭用品や車などに触れる機会も増え、羨望が次第にあこがれとなってデザインの道を選んだと思う。

インタビュアー
大学当時はどんな学生だったのですか?

高橋さん
学校にはあまり行かなかったですね。毎日、映画や芝居を観たり、画廊や美術館へ行ったり、小説をよく読んでいましたね。でも絵はずっと描いていました。それと、劇団のアルバイトをしていて、日本中のいろんな所へ「ドサ廻り」してました。正直、こちらの道への迷いもありました。

インタビューア
それは驚きです。では、昔から絵を描く事が好きな様ですが現在も描かれていらっしゃるのですか?

高橋さん
はい。旅行や出張で出かける時スケッチの用具を持って行きます。描くのは早いのですが構図を決め、気持を高めるのに時間がかかりますね。天気が悪いことが一番困ります。近場なら又、別の日に描きに行けますが。

インタビューア
よかったら見せていただけませんか?

高橋さん
いいですよ。(スケッチブックを広げながら)描いたものは、自分史の小さな1コマとして、情景を思い出に、また、次のモチーフを膨らますことが出来ます。スケッチは写真と違って、「思い」や「創造」にふけることが出来ます。

インタビューア
なるほど。それにしても美術館の絵が多いですね。

高橋さん
そうですね、いろいろ回っていますね。いつか美術館巡りの本を出したいと考えているんですよ。もちろん写真ではなく絵を載せて。でも美術館の前で絵を描くのはプレッシャーですよ。

インタビューア
なぜですか?

高橋さん
絵を観に来た人達が美術館の前で絵を描いている人を見れば気になって覗いていくじゃないですか。あれは本当に勇気がいりますね(笑)

インタビューア
それは勇気がいりますね(笑)
デザインの話に戻りますが高橋さんにとって良いデザインとはなんですか?

高橋さん
私が会社(アイシン精機)に居たとき、トップや関係者から「良いデザインとは?」「グッドデザインは売れない」と良く言われました。かつて、柳宗理さんとも、よく話していたんですがグッドデザインを限りなく売れる商品に結びつけることが、デザイナーの役割。企業の責任ですよね。 良いデザインとは、技術の進歩や感性のうつろいなど時代の潮流をリードしてゆく部分と真、善、美とかかわる普遍性がきちんと語られ、表現されているもの。芭蕉の言葉を借りれば不易(パーマネンス)流行(チェンジ)ですね。

インタビューア
「人」と「モノ」が関わり豊かな生活に向け進展している現在ですがその中でどういったデザインに取り組んで行きたいとお考えですか?

高橋さん
デザインとはかつて「用即美」と言い伝えられ、用(機能)と美(カタチ)を結びつけること、用に忠実な美しさを結びつけることでした。しかし、価値観や生活様式が多様化する現在、「モノ」のデザインは用と美にとどまらず、より個性的な美しさ、使い心地といった感性に訴える要素や「用」そのものについても新しい使い方、楽しみ方などの提案を見せています。「モノ」はデザインを通じ、便利さだけでなく、潤いとときめきを与えてくれます。機能の偏重は味気なく、行き過ぎた便利さは人を怠惰にするとは言えませんか?かつての日本人は道具に対し作法で接したものです。ストイック(堅苦しい)な作法を通じ、道具の本質に迫り、空間の豊かさをも感じとったものです。
さまざまな機器、用品は生活空間の中で相互に機能し、輝きを増します。こういった生活空間をトータルとして見すえ、生活者側の視点でこれからもデザインに取り組んでゆきたいと考えています。

インタビューア
大学ではどんなことをモットーに教えてみえますか?

高橋さん
愛知産業大学へ来て10年になりますが、日頃、学生に対し「教えることは自ら学ぶこと」を心掛け、美しいものに感動する心、新しいものを創造する喜びを分かち与えてゆきたいと思っています。

インタビューア
ありがとうございました。


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