中部デザイン協会 デザインの仕事場におじゃまします

第10回 モノデザインプロダクツ 楢原新二氏

今回の訪問先は名古屋の中心に近い御器所交差点から徒歩1分、アーバン佐々木(マンション)4Fで、モノデザインプロダクツを経営する楢原新二さんをたずねてお話をうかがいました。楢原さんは工業デザインからグラフィックデザインまで幅広いデザインをされています。

インタービューア:デザイン事務所というのはきれいに整理されているイメージがありますが、行ってみると案外そうではなかったりします。でもここはイメージ通りきれいに整理されて機能的な感じがします。楢原さんの性格でしょうか。

楢原さん:そうでもないでしょう。毎日仕事をしやすくと思ってやってきた結果で特別きれいにしようと思っているわけではありません。

インタービューア:入り口のそばのキッチンに素敵な器がたくさんありますが、これもデザインされたのですか。

楢原さん:これは女房の仕事の関係で自然に集まったものです。わたしのデザインではありませんが気に入ったものは結構あります。今は仲間たちとの飲み会に使っています。
(楢原さんの奥様はテーブルコーディネートで有名な楢原雅美さんです。)

頑張った学生時代

インタービューア:それでは楢原さんご自身のことを聞きたいのですが、デザイナーになられるキッカケからお願いします。

楢原さん:キッカケといっても私は特別なものは何もなかったですね。皆さんがよくおっしゃるように子供のころに学校推薦で出した絵が市長賞をとったことはあります。絵が好きだからデザインというわけでもないでしょうが、まキッカケといえばそうかもしれない。ただ一般的な仕事(サラリーマン)にはむいていないと思っていました。中学・高校は普通科の生徒でしたが、今言ったようなわけで東京の美大(武蔵野美術大学)へ進むことにしました。

インタービューア:学生時代はどういう学生だったのですか。

楢原さん:大学に入ったらとにかく遊ぼうと決めていました。今の学生と同じですよ。ところが全校一学年のデッサン特別実習で良い評価を受け、頑張らざるをえない状況になってしまったのです。遊びはしましたが、自然に頑張るようになり最終学年のころはデザイナーになろうと考え始めていました。

名古屋に来たわけ

インタービューア:優秀な学生だったんですね。そんな楢原さんが名古屋でデザイン事務所を開くようになったのはどんな理由からですか。

楢原さん:大学の最終学年の時先輩から声をかけられていた自動車会社があって、ほとんどお世話になるつもりだったのですが、ある時この業界はハンドル数年、パネル数年という(嘘か本当かわかりませんが)話を聞きまして、これはイカン、自分にむいてないと思いました。ちょうど同じ時期に大学の学部長から「名古屋にデザイン創世記の人が事務所をやっているから夏休みの里帰り(福岡)の折に寄って見なさい」と言われて初めて名古屋駅に降りました。これが名古屋との縁の始まりです。

インタービューア:その事務所で働くことになったのですね。

楢原さん:そうです。名古屋で仕事を始める前に尊敬していた先生から、5年間は我慢して修行しなさいといわれ、私もそのつもりで名古屋に来ました。

インタービューア:初めてのお仕事はどうでしたか。

楢原さん:そこは職人の徒弟制度の社会のような環境でびっくりしましたが、5年間は修行するつもりで頑張ろうと思いました。それでも仕事の内容は陶磁器の絵柄のデザインから産業機器のデザインまで、様々なジャンルにわたっていて結構忙しい毎日でした。そうこうするうちに5年のつもりが7年6ヶ月が過ぎ、思いきって念願の独立をすることにしたんです。

東京へ舞い戻るつもりが…

インタービューア:独立後はどうされたのですか。

楢原さん:そのころはお金もそこそこありましたので、3ヶ月くらいゆっくり遊んでから東京へ舞い戻るつもりでした。ところが、1ヶ月程たった時楽器メーカーで外部デザイナーを捜しているということをある人が教えてくれました。それで経験だと思いデザイン課題を提案して面接を受けてみました。それが採用されることになり、当時ととしてはトビッキリの月10万円の基本料に加えて個別デザイン料で契約することになりました。それで東京行きは1年延長することにしました。ところがそうこうしている間にクライアントが増えてきて結局名古屋に住み着くことになり今に至っているということです。

インタービューア:楽器メーカーでは実力発揮というところですね。それで現在はどんなお仕事をなさっているのですか。

楢原さん:プロダクトデザインが主ですが、モノのデザインをするとブランドマーク・ブランドロゴ・パッケージと広がり、パンフレットまでデザインするケースが多くなってきました。それで色々なジャンルの人と協力しながら仕事をしています。

商品にダイナミズムを

インタービューア:色々なジャンルでお仕事をなさっている楢原さんから、仕事を通して感じていらっしゃることがありましたらお話いただけますか。

楢原さん:そうですね、造れば売れる時代を経験した私たちの世代は、短期の内にモノを作りすぎました。反面この経験が日本のデザインを世界のトップレベルに押し上げたことも事実です。

モノがあふれている現在、消費者はよほど画期的な商品でないと納得しなくなりました。開発側が自らのモノ作りの飽和点を感じ、商品にダイナミズムを感じさせる必要があります。そしてその必然性・整合性がなければ消費者に拒絶されます。造り手がいかにドタバタしても、カギを握っているのは消費者だということを実感している昨今です。

インタービューア:今日は貴重なお話をありがとうございました。これからもすばらしいデザインをお願いします。


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